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小さな身体に起きた大きな出来事──初めての発熱を通して思ったこと
保育園生活が始まって、わずか5日目。
それは、まるで予告もなく突然にやってきました。
夕方、仕事を終えてお迎えに行ったとき、先生が少し申し訳なさそうな表情で言いました。
「今日、ちょっとお昼寝のあとから体が熱かったんです。測ったら37.9℃あって…様子を見てましたが、やっぱり少ししんどそうで…」
その瞬間、私の胸にざわっと不安の波が立ちました。
初めて聞く「発熱」の報告。今まで体調を崩すということには皆無でした。
家に帰ってもう一度測ると、体温は38.5℃に上がっていました。
機嫌も悪く、食欲もない。いつもならよく笑っていたのに、今日は抱っこから離れようとしない。
「これが…噂の“社会からの洗礼”か…」
「うちの子、風邪なんてひかないと思ってた」なんて、ただの親の希望。
振り返れば、保育園に通うようになるまでは、軽い鼻水以外ほとんど体調を崩したことがありませんでした。
だからどこかで、「うちの子はけっこう丈夫かも」なんて思っていた。
親になってまだ10カ月、わが子が体調を崩す事に対する経験値が低かった私にとって、 “発熱”という出来事は思っていたよりも大きく、重たいものでした。
寝かしつけても熟睡とまではいかず、ちょくちょくに目を覚まし、泣きながら妻や私の探す小さな手。
額に触れると、まだ熱い。汗をかいているのか、体がぐっしょり濡れていて、パジャマも何度も着替えました。
夜中、体温計を手にしながら「今、何度?」「熱性けいれんってこのくらいの熱で起きるんだっけ?」なんてスマホで検索しまくる私と妻、そんなことを考えると寝る時間が無くなっていきました。
「こんなとき、どうしたらいいんだろう」
たった1日、たったひとつの風邪。
だけど、親としての私の心には、いろんな感情が押し寄せていました。
看病を通して気づいた、“強くなる”ってこういうことかもしれない
翌日、かかりつけの小児科に連れて行くと、先生はとても穏やかな口調で言いました。
「保育園に通い始めたら、こういうことはよくありますよ。まだ身体がウイルスに慣れていないので、よく熱を出すんです。でも、心配しすぎなくて大丈夫。少しずつ、身体の中で戦える力を育てているんですから。」
この言葉に、私達は安堵すると同時に少し泣きそうになりました。
そうか、この子はいま、小さな身体で、見えない敵と闘っているんだ。
「強くなる」って、何もできるようになることだけじゃなくて、「いろんな経験を、自分の中に取り込んでいくこと」でもあるんだな、と実感しました。
その日の夜、まだ熱が残る我が子を抱っこしながら、私は心の中で何度もこうつぶやいていました。
「よくがんばってるね。えらいね。大丈夫、ママとパパはここにいるよ。」
子どもも、親も、 “免疫”を育てている最中
今回の風邪を通して思ったのは、子どもだけじゃなく、親である私たちもまた、 “免疫”をつけている最中なんだということです。
予定していた仕事を休むことへの葛藤。
周囲への申し訳なさ。
子どものつらそうな顔を見て、どうしようもない無力感、心の中で「頑張れ」と叫ぶしかできない私たち。
これまで経験したことのない感情にぶつかりながらも、「それでも自分は、ちゃんと親をやってる」と、少しだけ自信も芽生えました。
保育園に通うということは、親子それぞれの世界が広がっていくこと。
その分、ウイルスとも出会ってしまうし、泣いたり苦しんだり、時には立ち止まることもある。
でも、それを乗り越えた先には、今より少しだけ強くなった親子の姿があるのかもしれません。
最後に
あの初めての発熱から数日後、子どもはすっかり元気を取り戻しました。
また元気に「ばいばい!」と手を振って保育園に入っていく後ろ姿に、私はこっそりエールを送ります。
「今日も元気で、たのしく。だけど無理はしないでね。」
保育園生活はまだ始まったばかり。
きっと、これからも何度も“社会の手荒い洗礼”を受けるのでしょう。
でも、そのたびに、私たち親も一緒に学んでいなかいといけないんだとと思います。
ゆっくりでもいい。親子で一緒に、少しずつ、たくましくなっていけたら──。
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